2003年の発売以来、好調な売れ行きを誇る
『今川焼 カスタードクリーム』は
いまやキューレイの主力商品のひとつ。
ロングセラーのその裏では、
常に美味しさを追求する
こだわりのストーリーが生まれている。
採用情報
2003年の発売以来、好調な売れ行きを誇る
『今川焼 カスタードクリーム』は
いまやキューレイの主力商品のひとつ。
ロングセラーのその裏では、
常に美味しさを追求する
こだわりのストーリーが生まれている。
リニューアルに
立ちふさがる、
数々の困難
2019年。商品リニューアルプロジェクトの中心で、木村瑞希は戦い続けていました。目指すのは、2020年の発売。商品は『今川焼 カスタードクリーム』。キューレイが誇る、ロングセラーの主力商品。
商品リニューアルは、木村を中心としたキューレイ今川焼チームからの発案でスタートしていました。2018年に開発部に異動となった木村は、まず今川焼・オムレツを中心に、様々な商品の試作品を作る担当に。新商品やリニューアルのプロジェクトでは、時に百通り以上の試作品を作り、開発部社員はもちろん、関係各部の社員やニチレイフーズの営業社員に試食してもらい、そして味覚評価試験にかけ、「発売できる美味しさか」「市場に受け入れられるクオリティか」「ライバル商品に勝てる商品か」といった多様な意見を集め、検証を繰り返します。
つかんだチャンスに、1年間の経験で挑む
1年間、木村は自身で配合を組み立てることから始め、検証のための試作品、いわゆる「テーブル品」を製作してきたのです。百通り以上ものテーブル品を作り、キューレイが製造する今川焼の生地・クリームの特性や他社との差別化などを知る中で、「いつか、自分が中心となってリニューアルのプロジェクトを進めたい」という想いが強くなっていました。そして、つかんだ初めてのチャンスが、2020年に向けたリニューアルプロジェクト。木村はメインメンバーに抜擢され、プロジェクトを牽引する立場に。与えられた6ヶ月という期間で、新しい『今川焼 カスタードクリーム』を完成させなければなりません。
目指すのは常に「キューレイの最高傑作」
目指すのは「よりコクを増し、上品で滑らかなクリーム」「お店で食べるような本格的な美味しさ」「現在以上にムラなく、安定して生産できる商品」。その実現のために、新たな材料を試し、生地やクリームの配合を0.01g単位で調整し続けてきました。それほどわずかな差が、美味しさを左右する。バランスを変えてしまう。卵黄を贅沢に使うほどクリームがスクランブルエッグのようにダマになって滑らかさを失うことも。それが今川焼の難しさ。試せば試すほど、自分の前に立ちはだかっている大きな壁の存在を、木村は再認識するのでした。それは、2014年のリニューアルで誕生した、現行の『今川焼 カスタードクリーム』。木村の前任である、井上晴香が開発を手がけた商品。挑むほどに、その圧倒的な完成度の高さ、超えるべき壁の遥かな高さを、木村は痛感するのでした。
「それでも、任されたこのリニューアルを、自分の手で成功させたい」
木村は自分を奮い立たせ、リニューアル実現に向け、また挑むのです。
さらなる高みを目指して
2013年。木村がリニューアルに向け奮闘している数年前、同じくリニューアルプロジェクトを任された井上の前にも、様々な困難が立ちはだかっていたのです。
スイーツが好きな30~60代の女性を対象に実施された『今川焼 カスタードクリーム』に関するアンケート調査の結果と、そこから導き出された翌年秋に向けたリニューアルプロジェクトの方針に、井上は向かい合っていました。
2003年の発売以来、売上げ好調なキューレイの『今川焼 カスタードクリーム』。10年間で4回のリニューアルを果たし、キューレイの看板商品に成長しました。卵黄の割合を圧倒的に高くしたカスタードクリームは自社工場で内製。生地もあずきあんの生地とは異なる、カスタードクリームに合わせた自社配合。その日の気候に合わせて日々細やかな火力調節で焼成し、「洋菓子店と同様の美味しさを手軽に楽しめる」とすでに高い完成度を誇る商品。それでも現状に満足することなく、「より良い品質を実現し、売上アップへつなげる」というゴールが今回も掲げられました。具体的には「バニラ風味をアップさせ、軽い口当たりながらしっかりとした満足感」「バニラビーンズシードを加え、より本格的に」「安定生産体制を構築する」。求められているのは、フルリニューアルに近い、大きな変更でした。
井上にとっては、初めて主力商品のメインを任されたプロジェクト。入社以来、開発部でテーブル品の製作から商品発売までを担当し、そこで培った経験を活かしてプロジェクトを成功に導く。そんな意欲にあふれていました。しかし、想像以上の困難が、井上の行く手を阻んできたのです。
「美味しさへの
こだわり」にこそ、
突破口が
リニューアルプロジェクトは、ニチレイフーズの担当部署とキューレイ社内の全部署を巻き込み、それぞれから承認を得ることで先に進みます。まずは生産ラインで量産体制を構築できるかを検討します。これをクリアしてはじめて、プロジェクトが本格的にスタートします。このステップは依頼内容から検討したレシピで無事クリア。しかしその後、井上は壁にぶつかったのです。
プロジェクトがスタートすると、ニチレイフーズの事業部・営業担当、キューレイの業務部と品質保証部、製造部、技術部とのやりとりが始まります。業務部は、商品の原料を調達する部署。今回は、新たな材料としてバニラビーンズシードを使用することが決まっていました。「高品質のマダガスカル産を使いたい」と井上は考えていましたが、その案を通すためには、様々な産地のものを取り寄せ、試食で違いを認められねばなりません。井上は業務部に依頼し、マダガスカル産を複数種類、その他の産地のものも取り寄せてもらい、何度も試作を繰り返しました。「ゴールとする香りの高さと本格感のためには、どのバニラビーンズシードを、どれだけ使うべきか」「それは安定的に供給されるのか」「カスタードクリームの粘度に影響は出ないか」「コストはどれほどか」と様々な要素を比較検討し、業務部と連携しながら試作を繰り返すのです。その上で、井上が採用を狙うマダガスカル産のバニラビーンズシードで、「これが最適だ」と認められるクオリティを出さねばなりません。わずかずつ配合を変えながら、井上は百通り以上の試作品を作り続けました。
立ちはだかる2つのハードル
しかし、思うようにはいきません。キューレイの今川焼の特長でもある「卵黄を贅沢に使ったカスタードクリーム」では、バニラの風味が立ちにくいのです。バニラビーンズシードを増やせば、香りが鼻につきます。さらに、バニラビーンズシードの黒いつぶつぶが設備に残り、異物が混入したと分析され、ラインが止まってしまう危険性があることもわかり、品質保証部が難色を示します。味と量産。2つのハードルを越えなければ、先に進むことは不可能。
井上は、バニラビーンズシードの粒が設備に残留する原因を、様々な角度から分析することに。ラインに立ち、設備を隅々までチェックしていきました。口当たりや香りの立ち方を考慮し、細かく砕かれたバニラビーンズシードは、これまでの洗浄方法では簡単に除去できないことが分かってきました。井上は、品質保証部の協力のもと製造部と技術部をたずね、従来と違う洗浄方法を試して、洗浄具合を検証しました。ただ効果的な洗浄方法を探るだけでなく、そのコスト、製造オペレーションへの影響、なにより味と人体への影響の検証も重要となります。試行錯誤の末、粒の残留について確認方法を変え、安全かつオペレーションにも影響の出ない方法を見つけることができました。これで量産の問題はなんとかクリア。残るは、肝心の味。
ヒントはこだわりの影に
井上は、原点に戻り、プロジェクトの方針を決めたアンケートを再度分析することに。アンケートには、様々なお客さまの声が詰まっていました。満足の声、お褒めの言葉、嬉しいエピソード。一方で、リクエストや不満の声もありました。
「これまでも様々な声をいただき、それを分析することで、商品は進化してきたんだ」
キューレイが掲げる「美味しさ追求へのこだわり」。その一端を垣間見た気がしました。その時、井上はひらめいたのです。
「これまでの先輩たちも、同じように困難を乗り越えてきたはず。そのノウハウが、リニューアルの資料に残されているはずだ」
過去の資料を紐解き、配合検討内容を確認すると、同じような壁にぶつかった記録が見つかりました。そして、ヒントも。「洋酒を使って検証」という記述。井上がまだ試していない材料です。すぐに井上は、いくつも高級な洋酒を集め、試作を始めました。
「変わった。バニラの風味が、洋酒で高まっている。コクも、しっかりと感じる」
手応えを感じ、自信とともに試食へ。ニチレイフーズの営業担当はじめメンバーからは次々と高評価が。リニューアルプロジェクトは、過去の先輩たちの力を借り、その歩みを大きく進めることができたのです。
決して
止まることなく、
前を向いて
味覚評価試験が行われました。専門の知識とスキルを持った審査員が試作品を評価する、発売を決める最後のテストです。現行品と食べ比べていただき、細かく評価していただくのです。結果は、圧倒的な支持を集め、井上の今川焼が選ばれました。特に、カスタードクリームのバニラ風味が高く評価されたのです。苦労が報われた。ほっとした気持ちともに、井上は協力を仰いだ全部署の社員と、過去の先輩たちの業績への感謝を感じていました。
こうして2014年、『今川焼 カスタードクリーム』はリニューアル。パッケージには「マダガスカル産バニラビーンズシード」の文字が躍り、大きくアピールされることとなったのです。
受け継がれる、キューレイの精神
2014年リニューアルの記録。何度もヒントを求めて読んだ記録。
「ここにあるのは、超えるべき壁じゃない。自分の中に取り込み、力とすべき、キューレイの美味しさへの追求。そのこだわりの精神だ」
読み終えた木村は、また自身のプロジェクトへ向かう力を得ていました。
更なる高品質、より一層の本格さ。それは細やかな日々の調整を要し、絶妙なバランスの上に成り立つもの。木村のリニューアルは、無事に求める品質を再現することはできたものの、味覚評価試験で支持されたのは現行品。2020年のリニューアルは見送られることとなったのです。結果に肩を落とす木村に
「おつかれさま。次また、がんばろう」
という言葉が。育児休暇を終えて復帰した、井上でした。
歩みを止めず。前を向いて。
井上は続けます。
「商品開発には、失敗はない。私はそう考えてる。得た物は自分の中に、そしてキューレイに、ノウハウとして残っていく。いつかそれは、必ず報われる。だから前を向こう」
井上自身、2014年以降、何度もリニューアルに挑んできました。しかし、現在まで世に出た商品はないのです。それだけ、現行品が世に受け入れられ、満足されているという証拠。
「私たちは現状に満足してはいけない。それはあきらめることと同じだから。私たちは5年、10年先を見据え、美味しさを追求していかなければ。歩みを止めずに。前を向いて」
と井上は木村に話します。食のトレンドは日々変化し、要求されるクオリティは高くなり続けています。しかし、それをも超え、さらにその先の「愛される美味しさ」を作る。それがキューレイに課された使命。そしてキューレイが誇る、こだわり。
いつか必ず、自分の手でリニューアルを成功させたい。木村の胸に、また火が灯りました。その火は、前を向く原動力に。そしてキューレイを、未来へと歩ませる力となるのです。